<   2008年 09月 ( 3 )   > この月の画像一覧
ジャズ喫茶「マイルス」
b0129777_23365179.jpg


 先日、東京でのギャラリーめぐりの合間に、学生時代に住んでいた京王線明大前駅に寄った。

 駅から歩いてすぐの所に、当時僕が毎日のように通っていたジャズ喫茶「マイルス」があった。
20年前にはあった。

 その頃、「マイルス」のカウンターの向うに座っていた女性のオーナーは50代後半ぐらいの年齢に見えた。だからもう店はないかもしれないと思いながら、駅から甲州街道に出るまでの商店街を、店があるはずのところまで歩いてみた。

 駅前には新しいビルが建っていて、昔とはずいぶん様子が変わっていた。しかし、商店街の店がかなり模様替えをしていたにもかかわらず「マイルス」は20年前とまったく同じ店構えでそこにあった。

 店のドアを開けると、狭くて急な階段があって、それをギシギシさせながら登っていくと、薄暗い店のカウンターにはあの女性のオーナーが座っていた。やはりあの頃よりはずいぶん年をとってはいたが、あいかわらず無愛想だった。

 驚いた事に、かかっているLP(CDは絶対にかけない)は昔とまったく同じマイルス・デイビスの「サムシング・エルス」でしかもオーナーは首でリズムをとりながら聴き入っている。おそらく何千回も聴いているのに違いないのに。

 カウンターに座ると、目の前に温度によって色が変わる温度計が20年分のタバコのヤニをこびりつかせてまだあった。

 僕が20年前によく通っていたという話をそのオーナーにすると、
「あら、そう。どこかで見た顔だと思ったわ。」と、無表情に言った。良く見ると少し嬉しそうにも見えた。気のせいかもしれない。

 それでも、「今は何しているの?」と尋ねてくれたので、近況を話すと、
「あなたと同じようなことをしている人がいるわ、その人は30年前によく通ってた人だけど、今は年に1度東京で個展があるたびに寄ってくれるの。」と、しばらく店の奥をゴソゴソ探して一枚の名刺を見せてくれた。
 そこには、今では結構有名な瀬戸の陶芸家の名前があった。


 学生の時、特にジャズが好きだったわけではない。
その店の小説に出てくるような雰囲気がカッコ良く思えて通っていただけなのだ。
酒は飲めない体質なので、コーヒー2~3杯で粘った。
オーナーも愛想はないし本当はジャズなんかわからないしで、かなり居心地は悪かった。

 居心地の悪さも20年前と同じだった。

 昔よくかけてもらったアルバムのA面が終わって、そうそうにコーヒーの代金を払おうとすると、
「もう結婚はしたの?個展はどこでするの?」とオーナーは急に矢継ぎ早に話しかけてきた。本当に懐かしんでくれていたのかもしれない。

 コーヒーは20円値上がりしていた。
[PR]
by gadget-pottery | 2008-09-27 23:22 | 日々
東京
b0129777_1191750.jpg


 来年あたり東京で個展をやりたいと思っていたので、ギャラリーを探しに行ってきた。

 東京にはギャラリーが本当にたくさんある。
 一回行っただけでは個展をやるギャラリーを決めるのは無理だと思うので、今回はとりあえず実際に見て、場所の雰囲気やどの程度受け入れてもらえるのかという感触だけでも掴もうというのがテーマだ。

 個展をやるギャラリーのポイントとして重視しているのは、ギャラリーそのものの雰囲気ももちろんだが、その周りの街の雰囲気である。
人通りが多い商店街で、街を歩いている人が気軽に入れそうな場所が良い。

 学生時代の少ない東京生活での経験で、肌に合うと感じたのが中央線沿線の街だったのと、今回泊めてもらった従兄弟の家が西荻窪だったので、とりあえずそこらあたりから始めてみようと思って、吉祥寺・西荻窪・阿佐ヶ谷を重点的にまわった。

 といっても、めったに行かない東京だったので、少し欲張って美術館めぐりも予定に入れていて、どちらかというと昼間はそっちのほうに時間をとられてしまい、夕方から夜にかけて従兄弟夫婦もつき合わせてギャラリーを見て回った。

 ビックリしたのは、夜の7時や8時になっても街にはたくさんの人がいる。
今住んでいる土岐市の家は、田んぼの中にポツンと建っている。暗くなれば虫の声しかしない。そういう所にずっと住んでいたせいで、以前東京に住んでた時のことなどすっかり忘れてしまい、思わず一緒に歩いていた従兄弟に本気で「今日は何かのお祭りなの?」とたずねてしまった。
 ネットや本でいろいろ情報を調べて行っていろいろ知っているつもりでも、これでは典型的な田舎物の感覚である。

 情報と実際の肌で感じる事はまったく別物であった。・・・という事も知っていたつもりだったのに。

 オマケにいつも美術雑誌で見ていた有名な作品を今回美術館で実際に見たら、自分が思っていたものとまったく違うもので、それにまた驚く。
 自分が井の中の蛙であるという事をあらためて感じた。
工房の中にばかりいないで、もっと外にでかけなければいけない。

学ぶ事も多く、良さそうなギャラリーのあたりもつけられたので、とても収穫の多い東京であった。
[PR]
by gadget-pottery | 2008-09-21 00:38 | 陶芸
馬篭
b0129777_2125421.jpg


 従兄弟夫婦が東京からはるばる遊びに来てくれたので、中津川の馬篭宿を案内した。

 馬篭宿は古い宿場町が残っている場所だ。古い建物もとても良かったが、通りの左右に連なっている石垣が素晴らしかった。
 石垣の隙間からいろいろな植物が顔をだしていて、庭木ととても良くなじんでいる。
家々の壁に這わせた朝顔の蔓や、ほおずき。通りと建物の狭い隙間に作られた池の鯉。自然と建物と人々の生活の境界線が石垣と苔や小さな植物でうまく繋がっている。

 人が作ったものを自然が侵食していく様が好きだ。
建物が古くなって蔦が絡まって緑に埋もれかけた部分とか、石垣が苔むしている場所とか。

 それから、完全な観賞用ではなく人がちょっと道具のように自然を利用している場所も好きだ。
日よけのために壁に這わせた蔦や朝顔。路地の池に居る食用の鯉とか。

 馬篭の町並はちょっとづつ自然を利用しながら、ちょっとづつ侵食されている。自然と建物の境目がぼんやり滲んでいるようだった。
[PR]
by gadget-pottery | 2008-09-08 21:26 | 日々